仲間と造る W/ 家守堂

先月11月に京都伏見にある家守酒造(家守堂)とコラボレーションビールを造りました。 これは以前の投稿「KBCのコラボについて」でもお伝えしたように、コラボ醸造シリーズ「仲間」の一環で、京都醸造のOBOGたちと一緒にビールを造る企画として行われました。かつて私たちのチームに在籍し、ともにビールを造っていた彼らは、現在もこの業界のそれぞれのステージで活躍していますが、こうした機会に再会し、一緒にビールを造りをできるのは何よりもうれしいことです。

この企画のトップバッターは浪岡さん率いる奈良醸造とのコラボでした(彼らと造ったミルクスタウト「二都物語」はこちらから購入可能です)。そして今回は、OG家住弘子さんがヘッドブルワーをつとめる家守堂とのコラボ。さぁ、では彼らとはどんなビールを造ったのでしょうか。


(▲家守酒造Websiteから)


まず、この企画について話し合うために伏見の家守堂を訪れた際、弘子さんが淹れたての京番茶を提供してくれました。ご存じの方も多いかと思いますが、家守堂はかつて宇治茶を扱うお茶屋さんだった町家を活かし、ブリューパブとして生まれ変わりました。そこからインスピレーションを受けたビールを造るだけでなく、歴史を引き継ぐ意味でも現在はビールだけでなくお茶の販売もされています。弘子さんの淹れた京番茶の美味しさに、KBCのヘッドブルワー、ジェームズはいたく感動し、この茶葉を使ったビールを試作してみることを提案しました。


ちなみに、そこには偶然による巡りあわせがありました。というのも、数週間前にジェームスが「お茶の特徴を活かしたビールを造りたい」と社内で話していたのです。アメリカではお茶を使ったビールはあまり見られませんでしたが、日本には高品質なお茶が豊富にあるため、この素材を活かさない手はないという考えからでした。ですので、家守堂で美味しいお茶をいただいたことで彼のやる気を一層高めることになりました。

実は、私たちは以前にもこのスモーキーな味わいが特徴の京番茶を使ったビールを作ったことがあります。それは「燻(いぶり)」という名前のユニークなヘレス。たき火のような京番茶の香りがあり、唯一無二なフレーバーで好評だったのですが、その際、お茶の持つタバコのような特性が少し強く出すぎたこと、さらに茶葉をビールに加えると酸味が出て、pHが下がるという想定しなかった結果になったことをジェームズにも話しました。 こうした教訓を活かし、今回は京番茶の強い個性をイングリッシュバーレーワインの高めのアルコール度数と力強いボディでバランスさせるというアイデアに行きつき、ほのかな甘みを残すことで、親しみやすさを持ったスモーキーなバーレーワインを目指すことにしました。

11月の仕込み当日、弘子さんたち家守堂のメンバーを迎え、朝からビール造りに当たりました。京番茶を投入する頃には、燻し香が醸造スペースに広がり、いっそう非日常感を感じられる楽しい仕込みになりました。そうして出来上がったバーレーワインに、私たちは「狐火(きつねび)」という名前を付けました。

家守堂のある伏見と言えば狐のシンボルで知られる稲荷大社があることネーミングに狐を持ってきました(KBCのヘッドブルワーの名前もJames "Fox"であることもひとつ)。さらに、昔からの言い伝えで、夜な夜な道を急ぐ人を人魂のような火が後を追いかけたり、奇妙な形で化けて出て怖がらせたりする度に「狐火」のせいだと言われたことから、このビールも見た目と味の違いで飲む人を驚かせるのではと思い、まるで狐につままれたような味わい、美味しさが狐火の特長のひとつというのも理由です。気に入っていただけると嬉しいです。

狐火の商品ページへはこちら) 

ちなみに、家守堂側での仕込みにも今週の頭に行ってきました。そのビールのリリースは来年1月になるとのことです。どんなビールができるのか、楽しみにしていてくださいね!

そして次回のエイプブルーイングとのコラボについても近日中に紹介する予定です。