KBC木樽熟成 - その2 - UprightコラボとBrettの取り扱い
2020年に計画していた新たな取り組みの一つ、「木樽熟成ビール」 の発売がいよいよ近づいてきました。最近の投稿では、木樽熟成に伴う未知の要素と、未知への冒険による望ましくない副作用を減らすために私たちが取り組んだステップについて論じました。
過去の投稿では木樽の使用に焦点を当ててきましたが、実は私たちがまだあまり深くふれていない別の複雑な要素があります。それは野生酵母とバクテリアによる変化です。
現代の科学が発酵の不思議を解き明かすまで、醸造はこれらの微生物に大きく依存していました。微生物の存在が発見されていなかったので、醸造家達は空気中に浮遊していたり、木のタンクや道具に住み着いていたりする酵母や細菌を利用し、彼らが作った麦汁に取り込んでビールにしていました。この製造方法によって驚くほど複雑なランビックやグーズなどのベルギービールが生まれましたが、その恩恵を受けなかった多くのビールはたくさんの望ましくないオフフレーバーを伴う結果になったり、一貫した再現性のあるビールが造れないことも意味しました。
このような微生物の中で最もよく知られているのは 乳酸菌とブレタノマイセスで、前者はサワービールだけではなくヨーグルトやキムチといったたくさんの食べ物の酸味に関係しています。今日は、次のリリース「 一汁多彩 Brett バージョン 」を特徴づけるブレタノマイセスに焦点を当てます。
ブレタノマイセスは例えようのない独特の風味と香りを生み出し、これは飲んでみないとわかりません。納屋、馬用の毛布、皮などと説明されることもありますが、どれもそれ自体はあまり魅力的ではありません。しかし一汁多彩と組み合わせると、高いアルコール度数や異常な量のホップに依存しないシンプルなビールにも関わらず、発酵によって驚くほど深みがあり複雑な特徴を生み出します。
これこそが2019年に行ったお気に入りのコラボレーション、「一汁多彩」のコンセプトです。オレゴン州ポートランドのUpright Brewingと造ったこのアルコール度数3.5%のテーブルセゾンはシンプルさそのものです。麦芽、ホップ、酵母すべての風味と香りが調和して、繊細な複雑さを生み出しています。私たちはその一部をブレタノマイセスで二次発酵させ、ようやく発売のお知らせができることをうれしく思います。ステンレスタンクでの10か月の熟成を経て、かすかな複雑さの層がビールに加わり、私たちが惚れ込んだ元のビールよりもさらにおいしくなりました。このビールの魅力は、他の派手な木樽熟成シリーズのビールにない飲みやすさだけではありませんーあらゆる意味で本物のセゾンです。