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2025年を振り返る -10年という節目を迎えて-

2025年に年が変わってすぐに公開した「大きな節目を迎える2025年」という投稿の中で、ベンはこう語っていました。(過去の記事

「2024年が混沌の時期だったとすれば、2025年前半はまさに「狂騒」とも言える状況になるでしょう。」

そんな言葉で幕を開けた一年でしたが、今振り返ってみると、その予想は見事に的中していたと言わざるを得ません。実際、2025年は私たちにとって“狂気・狂騒”とも言える一年でした。

 

狂気的な製造ラッシュの理由
限定醸造のリリース、そしてコラボレーションビールの製造ペースは、これまで私たちが到達したことのない次元にまで達し、目が回るようなスピード感で走りました。

2024年にコラボレーションを通じて業界との接点を取り戻し、2025年には16回ものコラボレーションを実施。それぞれの仕込みには、相手ブルワリーとの綿密なやり取り、経験や知識の共有、そして「どんな面白いビールができるか」を一緒に考える創造的な時間がありました。

さらに多くの場合、相手先の醸造所でも同様の仕込みを行い、結果として30種以上のビールを“仲間”たちと共に造ることになりました。その楽しさと嬉しさの反面、各地を行き来する移動も含め、この取り組みには相当なエネルギーを要しました。

 

私たちがここまでコラボを急いでいたのには、ひとつの大きな理由があります。

それは、5月に開催した京都醸造創業10周年記念イベント「なみなみと」です。ヘッドブルワーのJamesが京都醸造に合流して以来、この一年余りの間にコラボレーションしてきた20のブルワリーが一堂に会してくれるという記念すべきイベントでした。ここですべてのコラボビールをお披露目するというミッションがあり、異次元級のペースで製造を進めていたのです。

 

なみなみとの成功
過去一度も自分たちでイベントを主催したことのなかった私たちにとって、正直なところ、非常にプレッシャーの大きい挑戦でした。東本願寺の門前という立派なロケーションは、このイベントを象徴する存在であるのは間違いないのだけど、あるいは失敗した場合にはその対比として際立ってしまうのでは、と思うところもありました。

当日は全国は青森から四国まで、さらには国外カナダからも錚々たるブルワリーが集結し、イベント全体を大いに盛り上げました。このイベントの計画から運営までを担当してくれたのは、椿野(通称バッキー)と、大出(通称ずん)をはじめとするチームメンバーでした。

結果として、メンバー達の努力と粘り強さのおかげで、イベントは想像を遥かに超える動員とビールの完売が続出するなど、大きな成功を収めました。当日を思い起こせば、悪天候の予報で、前半はすこし小雨がぱらつく瞬間もありましたが、皆の願いが伝わったのか、晴れ間を見せるほどに天気は回復し、最初の狙いどおりに、お東さん広場の芝生の上で、ゆったりと寛ぎながらビールを楽しむ人がたくさんいて、最高の光景を見ることができました。「もっとビールを用意してもらえばよかった」「キッチンカーの数は倍ほどあってもよかった」と将来に活かせるような声はいっぱいあったのですが、ひとまず「なみなみと」は大成功で幕を閉じました。

さらに続く混沌と熱狂
正直なところ、必死で取り組んできたイベントが終われば、夏頃には少し落ち着くのではと、どこか楽観視していた部分もありました。しかし、スタッフの誰に聞いても、「その後、楽になったことなんて一度もなかった」と答えるでしょう。

そうです、5月のイベントで終わりではありませんでした。
ジェームズか合流した2024年から取り組んできたビールプログラムの再構築は、2025年に入って一気に加速しました。

2025年にリリースした商品数は、前年を上回り、定番3種を含めて92種類で過去最多となりました。当然ながら、くりかえし定期的に作る定番を含め、それを1つずつ仕込んで、発酵させて、充填する醸造チームにとって決して楽な一年ではなかったと思います。

しかし、ジェームズの知識や経験をふんだんに盛り込んだ実験的な限定醸造を通して、私たちができることや造りたいビールとは何か、そして今クラフトビールに求められているものというのも可視化できました。

そして、コラボレーションでは、その醍醐味である即興性や自由な発想を取り戻し、探究心や創造性を高めることには成功しました。その一方で、私たちはこれまでのように「勢いだけで走り続けられる」規模ではなくなりつつあることも実感しました。一歩が大きくなると、うまくいけばインパクトも大きいがコケる時は、派手にコケるという事例も国内外でよく見られるようになりました。

 

2025年の一年で得た学びを踏まえ、そして国内のクラフトビール市場の現状を見据えながら、今後私たちはどう進むべきかを真剣に考えています。

 

次の10年に向けた再調整
日本のクラフトビール市場は、この10年で大きく様変わりしました。私たちが創業した2015年頃は、年間で私たちを含めて4つの醸造所が開業する程度でした。当時は新しい醸造所ができるとなれば、それだけで人々の関心を引き、多くのビアバーやレストランは新商品をいまかいまかと心待ちにしているくらいでしたので、購入したくても買い逃してしまうというようなことが日常茶飯事だったのが、たった10年ほど前のことです。

 

ところが、時代は変わり、今では毎週のように新しいブルワリーが誕生しています。この業界に身を置いていても、ペースが早すぎて、数が多すぎてその全体像を把握するのが難しいほどです。

 

選択肢が増え、全体の品質が向上していること自体はどのような業界においても健全なことです。しかし一方で、市場の成長がこの開業ペースに追い付かず、吸収しきれていないまま飽和状態になっているのも事実です。かつてのように「良いビールを造るだけ」では生き残るのに不十分な時代になったと言えるでしょう。

 

さらに、同じものを造り続けているだけではすごい早さで廃れていくことから、進化と革新が求められる時代でもあります。IPAが依然として主流であることに変わりはありませんが、どのようなホップを使うか、製造方法は?という風にスタイルはどんどん細分化され、多様な好みに応え、どんどん移り行く消費者の嗜好を追いかける面も生まれています。

 

クラシックなスタイルや、昔ながらの力強いIPAを造るのであれば、「本当に圧倒的に美味しいビール」を目指さなければならない。つまり、原料選びから製造工程に至るまで、すべてにおいて妥協をゆるさず、一段上を行く必要があると私たちは考えます。

 

困難を越えて、その先へ
2025年は、京都醸造にとって歴史的な一年でした。
日経ビジネスによると、企業が10周年を迎えられる確率は10%未満と言われています。 確かに10年という節目は、「ベンチャー」や「スタートアップ」から次のフェーズへ移行するタイミングでもあります。

 

その10年という節目を越えた私たちは、自らを「安定した会社」と呼ぶつもりは一切ありません。先に述べたように、企業の強さは「大きいから強い」「小さいから弱い」といった単純なものではなく、かつて勢いを誇り、栄光に輝いていた中堅クラスのブルワリーが、急激に失速し、マーケットから姿を消していく様子を、私たちは幾度となく目の当たりにしてきたからです。

 

そこで私たちは、次の10年を見据え、この2年のうちに多くの投資を行いました。

醸造所内にQAQCラボを新設し、ビールを定量的に分析、評価するための設備を導入。 そして、溶存酸素(ビールの風味と品質を脅かす最大の敵)を極限まで抑えるための設備を整え、すべての工程を見直しました。

 

それが功を奏して、缶内の平均酸素量は、私たちが国内で高品質として名が轟いている先輩ブルワリーと肩を並べるレベルに到達しました。

 

この確かなデータをもとに、要冷蔵商品の賞味期限を段階的に延ばし、常温流通可能な商品も展開開始することができました(京都限定ベルジャンウィット「はばかりさん」、定番セゾン「一期一会」)。

品質を第一に考える私たちですが、そのために大手メーカーが用いるパスチャライズ(加熱殺菌)やフィルタリング(濾過)は行わず、シャンパーニュやベルギービールなどで伝統的に用いられる容器内の二次発酵製法を採用しています。これにより、手間や時間はかかるが、品質の安定性を高めながら、スタイルによってはむしろ味わいを向上させることができるのです。

さらに、日々生み出されるホップ品種やホップ製品、そして新しい酵母、スタイルを用いながら、私たちに出来る最高のビール造りを推し進める手綱は緩めず、なんなら京都醸造らしさも大事にしながらも、これまで以上に境界を押し広げていきたいとも考えています。

業界としての厳しい現状などにも触れてきましたが、私たちはどのように2026年、そしてそれ以降をつき進んでいくのか。

まず一つ挙げられるのが、最近なかなか注力できていなかった、お客様との直接的な接点を増やすことです。その第一歩として、タップルームの改装を進めており、年明け早々に完成予定です。これは、実際に醸造所にお越しになった方々へ最高の体験をしてもらいたいという取り組みで、また改めて詳しくお伝えする予定です。

その他、2026年の展望については、新年を迎えたころにお話ししたいと思います。

本年も皆様からの厚いサポート、ありがとうございました。
これからも、京都醸造をどうぞよろしくお願いいたします。

 

Paul & Ben
Kyoto Brewing Co. 共同創業者