親友、藤井さんに捧げる「藤源郷」と私たちの願い

ご覧になった方もいらっしゃると思いますが、先日はご地愛シリーズの一環で地元の子ども食堂を運営する団体に寄付をした内容の投稿をしました(記事はこちら)。今日は昨年造った限定ビール「藤源郷」を造った背景と、そのビールの利益を誰にどのように使ったか、について皆さんにお伝えしたいと思います。少し長い文章ですが、最後まで読んでもらえると嬉しいです。

 

埼玉のクラフトビールファンや京都醸造をフォローしてくださってる方はすでに知ってくださっていると思います。Primordialというかつてあったクラフトビアバーとそのオーナーで2020年813日に若くしてこの世を去られた藤井健太さんのことを。人気の多いエリアから少し離れた静かな住宅地にあったその店は、藤井さんの研ぎ澄まされたセンスが隅々まで散りばめられていて、彼の温かい人柄に多くの人が集う素晴らしいコミュニティができていました。そして、大変光栄なことに京都醸造の常設店として、創業間もないころから私たちのビールを南浦和の方々提供し、広く紹介してくれていた大切なお店でした。

 

そんな藤井さんにガンが見つかったのは30代半ば。その若さ故にガンの進行も早く、みるみるうちに彼から残された時間を奪っていきました。そして、37歳の藤井さんがこの世を去られたことに、私たちは打ちひしがれ、大きな喪失感を感じました。なぜ、あんなにも希望に満ち溢れた私たちの友達を無慈悲にも遠くへ連れ去ったのだろうか・・。

 

私たちよりも藤井さんの近くにいた、彼の親友でありお店の常連だった渡橋さんご夫妻や大変な失意の最中にもかかわらず温かく親切に接してくださった藤井さんのお母様とお話しをしていた時に、私の頭によぎったことは「回避するには、、」でした。

 

一般的に会社に勤めている人は、年に一度の健康診断を受け、または受けるように会社が働きかけることもあり、大病を早期発見できるものだが、その一方で、会社に属さない人はどうか。健康診断を受けなさい、と言ってくれる人が周りにいなくて、ついつい受けていない、あるいはそもそも受けたことがない、という方もいるかと思います。そういう方も、同じように健康診断を受けていたら、回避できる可能性が残されているものではないでしょうか。

 

身体のあちらこちらで変化が始まる35歳を超えると、胃腸の状態を見たり、採血をすることで、病気のきっかけになるような兆しが見つかることがあります。しかし、現状として、藤井さんが定期的な健康診断をしてなかったように、特に飲食店経営者や小規模事業者は、寝る間を惜しんで仕事をされている方も多く、その忙しさを理由に健康診断は受けていない方が多いのではないかと想像します。実際に、休みの日も仕込みや買い出しなど自身の事業のために、時間やエネルギーなど全てを捧げているようなビアバーやレストランの店長を何人も知っています。

 

特にまだ若い時は、健康には自信があって、定期的に診断に行くくらいなら、別のことに時間を使いたい、と考えるのもわかる気がします。現に、私たちも創業から数年は、あまりにもやることが多いことを理由に定期検診の優先度を下げて、行わずにがむしゃらに走っていた頃がありました。

 

しかし、そんな時こそ過去の自分に問いかけたい。

「もし藤井さんが定期健診に行っていたら、事態は異なっていたのでしょうか?例えば、彼のお店を1日だけ休みにして。」

 

今は亡き親友、藤井健太さんとの共作ビール「藤源郷」は、藤井さんの長年の想いが実り、とても素晴らしいビールになったと同時に、たくさんのことを考えさせてくれる機会にもなりました。そして、この藤源郷で得た利益分をこうしたことを一人でも多くの人に伝え、若くして病気に倒れてしまう前に健診の重要性に気づいてもらえるきっかけづくりに役立てられたらと考えていました。

 

そんな中、「キャンサーネット」というある非営利団体のことを知りました。( https://www.cancernet.jp/)

がん患者およびその家族の診療に対する意思を尊重するため、科学的根拠に基づいた情報提供に関する事業を行う団体で、がん検診の啓もう活動などにも取り組まれているそうです。がんを「知る」、「学ぶ」、「集う」と書かれたキャンサーネットのウェブサイトには、がん治療に携わるお医者さんとのオンラインセミナーや講座、がんと共に生活することにまつわるコラムなども充実していて、まさにがんに関する情報ステーションといった様相を呈しています。未知なる敵に対して不安に苛まれた時、こうした団体の存在に救われる方が多くいることでしょう。私たちは、藤源郷の利益をこの団体の取り組みに託すことにしました。

 

大きな額ではないですが、これをきっかけに、より多くの方に検診の重要性を知ってもらえたら私たちの本望です。そして、このブログは私たちからの「お願い」で締めくくりたいと思います。もし、あなたが飲食店の経営者含め、その他自営業に携わる方であれば、年に一度の健康診断をとにかく受けて欲しいです。もし、それにかかる検査費が受けない理由になっているのであれば、お住まいの地方自治体が検査費のサポートを提供していることも多くありますので、一度お調べになってください。まず、半日から一日で済むこの検診に行くことが、あなたの人生に関わる最も重要な決断のひとつと言っても過言ではないと信じています。