ブログに戻る

11周年を迎えて

私(ベン)にとって、10年という節目はとても大きな意味を持つものでした。気がつけば10年経っていたという感覚もありましたが、同時に私たちはもう若い駆け出しのブルワリーではなくなっていました。数あるベンチャー企業の中でも10年続く会社はほんの一握りという話を耳にするたび、その重み実感します。 

  

この10年の間には、本当に多くの変化がありました。それは、クラフトビールという業界自体が他の業界と比べてまだまだ若いことを考えれば当然かもしれません。私たちが創業した2015年当時、新規創業するブルワリーはまだほとんどありませんでした。ところが今では、次々と新しいブルワリーが誕生し、クラフトビールが“当たり前”の存在になったとはまだ言えませんが、私たちが始めた頃に比べれば、とても身近なものとなったと感じます。 

  

私たちの11年目は、10周年記念イベント「なみなみと」から始まりました。創業以来の一大イベントで、当日までの準備を必死になって社内でとりくみました。そして、それが終われば一息ついて少し落ち着けるだろう、と考えていましたが、その予想は完全に外れました。むしろその後の半年間は、別の意味での“目覚め”の機会になったと言えます。次々と新しいブルワリーが登場する中で、その良い面と難しい面の両方を目の当たりにし、考えを止めることを許さなかったからです。元気あふれる情熱や今までに無かったアイデアが業界に入ってくるのは刺激的で素晴らしいことです。しかし同時に、市場の飽和も加速していくなかで、京都醸造自身も含め、クラフトビールそのものが進化し続けなければ存続していくことすらままならないと強く感じるようになりました。 

 

そこで打開策のひとつとして掲げたのが、クラフトビールが“ニッチ”の外へ広がっていく必要がある、ということでした。私たちの生活に存在する多くの物は、最初はニッチなものだったかもしれません。しかし、殻を脱ぐように、幾度となく改善され、生活に寄り添うように形を変え、なくてはならない身近な存在へと変わっていきました。クラフトビール業界が成長するにも、このようにもっと身近な存在になることが重要です。それを私たちらしいやり方で実現したいと考えています。 

  

そうした理由から、私たちは特に小売分野での展開に力を入れてきました。また、京都限定の「はばかりさん」と、全国展開している定番セゾン「一期一会」を、ベルギービールの伝統的な手法にならい、缶内二次発酵を施した仕様で製造しています。これにより、要冷蔵という条件が外れ、今ではさまざまな店舗で取り扱ってもらえるようになりました。近いうちに、この常温保管可能な商品のラインナップをさらに広げ、高品質で取り扱いやすいクラフトビールの提供を進めていきます。 


 

また、私たちは直営店の小売や飲食分野にも踏み出しました。その第一歩となる京都太秦映画村内にオープンした「味隠」が今年3月に開業しました。これは私たちにとって大きな一歩ですが、まだ進もうとしている道の過程のひとつに過ぎません。これから先にも、たくさんの挑戦が待っています。 

  

それがどういうことかというと、「味隠」で得た経験を活かし、異なる場所でも多くの人に喜んでもらえるお店を作り上げていくことが次の大きなステップになるでしょう。実は、飲食への進出は以前からいつかやりたいと考えていました。ただ、その“いつか”をずっと先送りにしてきたのです。いよいよ機が熟し、始動した「味隠」が始まってからまだ2か月も経っていない今の時点で、すでにその手ごたえと取り組む価値を強く感じています。 

  

美味しいビールをそれを想定された料理とともに提供すること。それも大切な要素のひとつですが、それ以上に、お客様と直接関わり、京都醸造や、時にはクラフトビールそのものの魅力を知っていただける機会・場所が得られたことは、私たちの「より身近な存在になる」という戦略において非常に大きな意味を持っています。そして、それは私自身にとっても大きなモチベーションになっています。 

  

創業当初、「普通のビール」を想像していた人が初めて私たちのビールを飲み、その味わいに驚き、笑顔になる瞬間を見ることは本当に嬉しい体験として深く記憶されています。そしてそれから11年経った今でも、その喜びは変わっていません。 

 

ベンジャミン・ファルク 

 

------------------------------------------------------------------------------------- 

 

 

京都醸造も創業から早11年が経ち、12年目に入りました。振り返れば昨年の5月に催した、10周年記念イベントに向け、それに至るまでの間、私たちはクラフトビール業界の先輩や仲間たち、KBC出身で自身のブルワリーを立ち上げたOB・OGたちと数多くのコラボを行いました。平均すると2週間に一度という目が回るようなハイペースでコラボ醸造を続けるということを成し遂げ、まさに怒涛の日々でしたが、とても楽しい時間でもありました。 

  

そんな慌ただしい日々の中で、国内の業界の現状についても考えることが多く、さまざまな想いや感情が自分の中に積み重なってきました。94年にビールの製造免許に必要な年間最低製造量が大きく引き下げられることにより市場が開かれて以来、今では私たちを中心に上下2世代、実質5世代にわたる醸造所が各地に存在しています。これほどまでに層が厚くなるということは、業界としては本当に素晴らしいことです。さまざまなスタイル、非常に品質の高いビールを造る醸造所が全国に増え、今日では、日本のクラフトビールは海外でも定評を得、よく知られるようになってきました。それはとても誇らしく、聞くたびに嬉しい気持ちになります。 

 

一方で、裾野が広がることにより、残念ながら決して良いとは言えないビールが存在していることも現実です。それを最初に手に取った方は、クラフトビールにあまり良い印象を持たず、離れてしまったりすることもあるでしょう。国がこの業界への参入障壁を下げようとしている意図はよく理解しているのですが、全国に1000を超えるブルワリーが存在する今、「美味しいビールを造っています!」とアピールするだけでは足りず、「安心してください。基本はしっかりしているので、期待を裏切ることはありませんよ」とまで言わなければならない状況には複雑な思いがあります。とは言っても、私たちは一人でも多くの人がクラフトビールのことを好きになってほしいと願うからこそ、もっと大きな声で"私たちが造るビールのこと""ビール造りへの思い"を発信し続けることが大事なのだと思います。 

  

現在ではブルワリー仲間とのコラボをする頻度を少し落としています。それでも、やっぱりコラボする相手と知識を共有し、また次の仲間たちと出会える機会を私たちは引き続き大切にしていきたいと思います。12年目も、以前ほどの数ではないですが、いくつかのコラボを計画しています。そして、願わくば来年、京都で再び12周年記念フェスを開催したいと考えています。 

  

これからも京都醸造らしさを大切にしながら、新しい素材や製法にも積極的に挑戦しながら、皆さまに美味しいビールを届け続けていきます。いつも京都醸造を支えてくださり、ありがとうございます 

 

ポール・スピード