新シリーズ2023「六人の創始者 - 6 innovators」
今年、また新たにIPAシリーズ「六人の変革者」が始まります。
2021年に創業以来はじめて定番ビールのレシピ変更に踏み切り、そしてそれまで「限定」と一括りにされていた定番以外のビールのために新しいシリーズを作りました。それによって各シリーズのコンセプトの中で、様々な醸造の試みが深化を見せ、年々おもしろくなってきました。唯一、IPAシリーズはこれまで、生き物が脱皮をするように毎年新しく生まれ変わり、ビアスタイルの広がりを見せてくれます。
味覚に焦点をあてた2021年の「六味六色」、そして世界のホップ生産国の個性に迫った昨年の「六遊記」と、それぞれのシリーズを通して異なる角度からIPAにアプローチしてきました。その根底には、圧倒的なポピュラリティで世界を席巻するアメリカンIPAだけがIPAではなく、実は多様性に富んだ自由で創造的なビールがIPAなのではないかというのが私たちの想いのひとつとしてありました。
新シリーズの紹介の前に、この「六遊記」と歩んだ1年を振り返ってみましょう。最初の独国(ドイツ)の巻では、ヘレスなどラガーで有名なこの大国にもしもIPAというスタイルがもともと存在したら・・・という空想から始まり、ジャーマンエール酵母とドイツ産ホップを使った、クリーンで爽やかに澄み渡るようなIPAに行き着くことができました。続く英国の巻では、前作同様にIPAの発祥の地として知られている英国がもしもモダンなIPAを造ったら、、と想像力に頼り、英国の麦芽やイングリッシュエール酵母など本場の材料を使いながらも、「モダン」な味わいに仕上げるために工夫をこらした作品になりました。麦芽の豊かな個性とともに土っぽさや花のフローラルなニュアンスを感じさせる印象でした。その後もフランス、オーストラリア、チェコ、ニュージーランドと続き、各国の素材の個性や国の印象を取り込んだユニークなIPAが登場しましたが、中でも、夏の暑いシーズンに登場した豪州の巻(セッションIPA)は、オージーホップの柑橘系のニュアンスとスルスルと飲みやすい口当たりがとてもいい仕上がりで強く印象に残っています。
ホップやビール文化をめぐる世界旅行は想像と発見の連続で造り手としても非常に楽しい取り組みでしたが、最後のニュージーランドを終着地として、いったんピリオドを打ち、今年2023年の新シリーズへと引き継がれます。
さて、新IPAシリーズ「六人の変革者」では、大きなトレンドを創り出した無名の醸造家たちに焦点を当て、六大IPAに取り組んでいきます。 現代のクラフトビールブームのきっかけを作った中心的ビアスタイル、IPA。国や時代によって多種多様に変化してきたが、その大きなトレンドの背景には必ず、流行や既成観念にとらわれず、人々を喜ばせる真のIPAを求めて果敢に新しい試みをする変革者たちがいたはず。エジソンや松下幸之助のように大きく名を残した醸造家はきっといないけど、IPAに注ぐ野心や情熱は、同じくらい熱かったはずだ、と各時代のトレンドメーカーに想いを馳せながら6種類のIPAを造っていくことにしました。
第一弾を「創始者 Creator」と名付け、IPAの祖であるイングリッシュIPAに挑戦する。18世紀にペールエールの銘醸地、英国バートンで造られていたようなIPA。果たしてどのような仕上がりになるのか。このシリーズを通して、私たちはスタイルの研究を行い、さらなる理解の深化と発見を期待しています。もちろんIPAファンにも喜んでもらえるビールを造りながら。 私たちのIPAをめぐる旅は続きます。また一年、「六人の変革者」にどうぞお付き合いください!乾杯!!