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NZホップ、その魅力とは

NZホップ、その魅力とは

京都醸造は、割と早い時期からニュージーランド(以下、NZ)のホップをビールに使ってきました。アメリカ産のホップが主流であったクラフトビールの大きな潮流からみると、すこしメインストリームから反れた選択ですが、そこにはいくつかの理由があります。 

  

ある時期から、ビールの材料についても、できるだけ「顔の見える」生産者から直接仕入れ、彼らとのつながりの中で、ビールを造りたいと思うようになり、思い切って仕入れ方を見直しました。それまでは、国内の商社から「これとこれをください」とオンラインショッピングをするように、ただ選ぶだけでした。その仕入れ方の変更から、NZホップの使用量が増え、今話題のFreestyleやEggersからも直接ホップを仕入れています。 

  

では、そもそもNZホップの何が、私たち含め世界中のブルワーを魅了し、ここまで注目される存在になったのでしょうか?ここでは、NZホップについて少し掘り下げてみたいと思います。 

-NZホップは、他の産地のホップと比べて何が違うの? 

自然豊かなNZで育つホップは、他の地域のホップと同じように、その土地ならではの味、よく言われる「テロワール」によって個性が生まれます。南半球特有の栽培環境で育つNZホップは、やわらかく、みずみずしいトロピカルな風味を持つものが多いのが特徴です。特に、トロピカルフルーツやエキゾチックな果物を思わせる甘い香りや味わいは、NZホップを語るうえで欠かせません。 

  

もちろん、北米産ホップによく見られるような、松や柑橘系のニュアンスや、ヨーロッパ産ホップの特徴であるハーブや花のような香りをNZホップから感じることもあります。 

  

しかし、それらを差し置いて、突出した鮮やかさと豊かさで迫ってくるトロピカルフルーツ香こそが、NZホップに最も共通して見られる、そして何より象徴的な個性と言えるでしょう。 

  

もうひとつ、NZホップ熱が高まってきている背景として、人気スタイルの変化も一つの要因として挙げられます。 

  

現在のヘイジーIPAを中心としたトレンドにおいて、ホップに求められる味わいが、これまでの「柑橘」や「松っぽさ」から「ジューシー」「トロピカル」「フルーティー」へと変化してきました。そうした嗜好の変化を受けて、ブルワーの期待に応えてくれる存在としてNZホップは脚光を浴びたのです。 

  

NZホップが生み出すトロピカルなホップ香は、北米やヨーロッパという他の主要産地のホップでは、なかなか再現することのできないレベルのものです。また、地理的な条件から、アメリカなどではNZホップを手に入れること自体が難しく、そうした希少性もまた、人気を後押しする一因となりました。 

 

日本の場合は、NZに比較的近いという地理的なメリットがあり、素晴らしい香りや味わいだけでなく、調達面から見てもNZホップの魅力はますます高まっています。

 

-なぜNZホップは、好みが分かれるのでしょう? 

  

恐らく、「NZホップが好き」という人がいる一方で、「ちょっと苦手」という人も少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。 

  

このように意見が分かれるのには、いくつか考えられる理由があります。 

  

まず、NZホップによく見られる、やわらかくトロピカルな味わいは、比較的新しいIPAのトレンドです。 

  

先に述べたように、近年のビールは、ヘイジーIPAにみられるように、以前よりも苦味が抑えられ、より飲みやすく、幅広い人に受け入れられる方向へと進んできました。 

  

そのため、それ以前のクラフトビールに親しんできた人にとっては、苦味が少なく、これまでとは異なるホップのキャラクターを持つビールが、少し物足りなく感じられることもあるでしょう。 

  

また、NZホップが持つ強烈なトロピカルフレーバーは確かに魅力的ですが、それでもNZホップが表現できる味わいの幅というのは、やや限られているとも言えます。 

  

例えば、ヨーロッパ産の伝統的なホップが持つ土っぽさやハーブのようなニュアンス、あるいは北米産ホップの持つ松脂のような樹脂感や、柑橘の皮を思わせる爽やかな苦みのある香り。こうした個性をNZホップだけで再現するのは、正直難しい。 

  

そのため、NZホップを主体としたビールは、強烈なトロピカル感が魅力である一方で、割と似たような味わいになりやすかったり、全体としての味わいの締りや奥行きが不足してしまうこともあります。 

 

-京都醸造では、NZホップをどのように使っているのでしょう? 

 私たちの、NZホップの使い方はさまざまです。 

もちろん、醍醐味であるトロピカルフルーツのような個性を正面に押し出すこともあります。特にNZをテーマにした「いろとりどり」シリーズのビールでは、そうした使い方をすることが多いです。 

  

一方で、ビールごとの味わいが似通ってしまわないように、私たちは「グァバ」や「パッションフルーツ+柑橘」のように、狙うフレーバーをひとつ、あるいは二つに絞り、複数の方向からその味わいを組み立てることもあります。 

  

トロピカルな味わいを目指すのであれば、NZホップはまず最初に候補に挙がる存在です。が、そこからさらに別の産地のホップを組み合わせることで、ひとつの産地のホップだけでは表現できない、より複雑で奥行きのある味わいに仕上げることもできます。 

  

また、NZホップを主役として前面に出すのではなく、クラシックなビアスタイルに新しい表情、アクセントを加えるために少量使うこともあります。 

  

クラシックなスタイルに伝統的なホップを中心に構成し、少しフルーティーなニュアンスをNZホップで加えることで、馴染みのあるスタイルに、ちょっと新鮮な一面を持たせることができるのです。 

 

-FreestyleやEggersについて 

 ニュージーランドホップを栽培している農家の多くは、コレクティブと呼ばれる農協に属しています。農家はホップを育てることに集中し、収穫したホップを農協に引き渡すことで、その後の加工や販売を任せるという仕組みです。 

  

従来、このような仕組みでは、複数の農家で収穫されたホップを一か所に集め、それらをまとめて加工します。これは、品質を均等にし、安定させるという点では大きなメリットがあります。 

  

一方で、別の見方をすれば、状態の異なるホップが混ざり合ってしまうので、もし素晴らしい出来のホップがあったとしても、他のホップと一緒になって、埋もれてしまう可能性があるわけです。 

  

そこで、Freestyle Hopsのような農園では、自分たちでペレット加工できる設備を持っているため、収穫されたホップをより細かく、正確に管理しながら加工することができます。例えば、ネルソンソーヴィンは収穫のタイミングによって、その表情が大きく変わります。早めに収穫したネルソンソーヴィンからは、白ワインを思わせるような爽やかな香りが感じられる一方、遅めの収穫時期のものからは、より濃厚で強いトロピカルフルーツのニュアンスが引き出されます。 

 

-最後に 

アメリカ産ホップの素晴らしいところは、その多様性です。実にさまざまな個性を持ったホップが存在します。しかし一方で、アメリカのホップ産業はその規模が途方もなく大きく、また業界そのものがそのように発展してきた背景もあり、実際にホップを育てている農家と直接つながることは、なかなか容易ではありません。 

  

それに対して、私たちがNZでホップを仕入れている生産者との関係は、もっと身近で、顔の見えるものです。実際にホップを育て、そして加工している農家の方々と直接話をすることができます。私たちがこの地域で育つホップにこれほど強い愛着を持っているのは、きっと、そうした距離の近さも大きな理由なのだと思います。素晴らしいホップそのものだけでなく、それをつくっている人たちの顔が見える。そうしたつながりがあるからこそ、私たち京都醸造は、これからもNZ産ホップを使い続けていきたいと思っています。 

Freestyleが、ホップの狙った個性を持たせるために、「適切なタイミング」で収穫することにかけるこだわりは並外れたものです。そして、そのこだわりは、設備や研究開発に惜しみなく資金を投じてきたというところにも表れています。 

  

そして、もうひとつのEggersも非常にとがったホップ農園の代表格です。Eggersは何世代にもわたってホップ農園を営んできた家族経営の会社で、Freestyleが2010年代初頭に事業を立ち上げた際、最初に手に入れた農園も、実はEggers家から購入したものでした。 

  

EggersではいくつかのNZ品種も栽培していますが、現在は、その中でも特にリワカの栽培に力を入れています。リワカは、パッションフルーツやピンクグレープフルーツを思わせるビビットな特徴的な香りで知られる品種です。そして、Eggersが育てているのは一般的なリワカだけではありません。 

  

さまざまな派生商品や、それに近い特徴を持つ新たな系統を生み出し、さらにFreestyleと同じように「マイクロロット」と呼ばれる小さな単位で細かく収穫することで、それぞれ異なる香りや味わいを表現していて、面白いビールをつくるための個性的なホップという世界中の醸造家にとって夢のようなものです。 

  

このように、FreestyleとEggersは、それぞれ異なる考え方で真摯にホップづくりに向き合っています。そして、それぞれの異なる哲学に、私たちは共感し、これらの農園のホップを愛し、使い続けている理由なのです。