新シリーズ2022「新天地 -New Frontier-」

これまで「帰還」、「六遊記」、「突破」と今年仲間入りしたシリーズを順に紹介してきました。そして今回と次回に紹介する2つのシリーズは初お目見えではないけども、昨年「解放」シリーズから登場し、この度独立するようにシリーズに加えることに決めたものです。

まず一つ目は、「新天地(New Frontier)」です。私たち、京都醸造にとっては長らく未踏の地だったスタイル、”ラガー”。日本においてはビールといえば、この喉ごしの良い5%のラガービールを指すのですが、私たちはなかなか足を踏み出さずにいました。理由はもちろんラガーを好きではないということでもなく、むしろ多くの人と同じように1日の終わりにすっきりした味わいのラガービールをプハーッと飲むのは好きな方です。ただただ、造る理由を見いだせなかったというのが大きな理由です。

国内に流通する99%のビールが大量生産されたラガービールで、クラフトビールの醸造所にもほんの少し、高い品質のラガーを造っているところがあります。この状況は今までもこれからしばらくは変わらないでしょう。しかし、ある時から私たちの考えに変化がありました。アメリカとベルギーのビールに対する私たちの愛が衰えたわけではありませんが、私たちが毎日飲みたくなるビール造りを、と考えると候補にラガーが挙がり、その味わいのシンプルさゆえに上手くつくることへの挑戦はますます魅力的に感じるようになりました。

また、アメリカのクラフトビール市場で年々多くの醸造所がラガーの魅力に再び立ち返り、現地で支配的にシェアを握る大手の大量生産されたラガーではなく、本場ドイツやチェコで長らく愛されているビール本来の美味しさを感じられるラガーを造り、アメリカのビール愛好家に支持され始めているのを見たこともその一因です。

私たちが「新天地」の名前で最初に造ったラガーは、極めてシンプルなものでしたが、その後回を重ねるごとに、異なるラガー酵母を使った様々な味わいのラガーにも取り組んできました。エール酵母に比べると、ラガー酵母が生み出すビールの多様性には毎度驚かされます。そうしたことから、このラガーの地での探検活動をこれからも続けたいという気持ちに至り、新天地をシリーズ化することにしました。ラガーと一言に言っても、麦芽の風味を最大限に味わえるものから、ホップの個性を活かしたもの、喉ごしやキレに特化したものまで幅広い味わいのものが登場する予定です。

新天地はジューシーホップ満載でパンチの効いてたり、アルコール度数が高いわけではないので、もしかすると、存在感が薄いという印象かもしれないけども、長い一日の終わりやクタクタに疲れた大変なひと時の終わりに、パッと手に取って飲みたくなるビールというのは、こだわり抜いた末に出来上がったシンプルなラガービールなんだと思います。お近くのお店で「新天地」を見かけたら、ぜひお試しください。

では、次の投稿では、もう一つの独立したシリーズを紹介したいと思います。