瓶内二次発酵
瓶内(樽内)二次発酵とは
当たり前のことですが、炭酸水や炭酸飲料は二酸化炭素が液体の中に溶けて存在しています。ビール造りにおいてこの炭酸がどのように加えられているのか、そしてその炭酸の加え方が製品にどのような影響を及ぼすのかということは、知られていないのではないでしょうか。
手法は大きく2通りあります。強制カーボネーション(炭酸ガス溶解)かナチュラルカーボネーションです。強制カーボネーションとは製品化間近のビールのタンクに二酸化炭素を加える方法です。一方でナチュラルカーボネーションは発酵の過程で得られる二酸化炭素を容器内に留めてしまうという方法です。どちらの方法もタンクが密閉の状態なので、ガス(二酸化炭素)が液体に溶け込みます。唯一の違いは、その二酸化炭素がそのビール自体の発酵由来のものなのか、それとも別のところから加えられたものなのか、という点です。
なぜこの手法を用いるのか
いずれの方法にもメリットがあり、現在は実用性や正確性から強制カーボネーションが主流です。ガスが強すぎたり弱すぎたり、最終製品に不要な発酵臭が残るなんて心配はありません。ナチュラルカーボネーションは何百年にも渡って使われてきた伝統的な方法で、労力がかかりはしますが、瓶内(樽内)での二次発酵中に、ビールの大敵である酸素が取り除かれるため、より製品を高品質な状態で長持ちさせることができます。
これによって何が得られるのか
BETとのコラボ商品である「時空を超えて」では、ナチュラルカーボネーションを試しました。そして2021年はこの手法を通じて、私たちの目指す理想に進んでいく初めの年でもあります。その理想とは、一つに伝統を重んじることです。醸造はまだまだ未知のことが多いですが、それでも産業革命前と比べると格段に簡単になりましたが。それでも伝統的な技術を用いてその技術を次の代に残すこと、その技術の具体的な実践方法や科学的な考え方を学ぶことも大切だと考えます。二つ目は、ベルギー酵母を主に使用する醸造所として伝統的なスタイルを忠実に表現することです。そのためにナチュラルカーボネーション、特に瓶内(樽内)二次発酵は欠かせないものです。
どのような製品で行うか
この瓶内二次発酵の手法を初めて使用したのは、Upright Brewingとのコラボビールである「一汁多彩」の木樽熟成ver.です。そして二回目はもうすぐリリースされる、伝統的なセゾンです。セゾンは私たちのお気に入りのスタイルですが、より伝統に忠実な造りに挑戦し、新しいセゾン酵母を一次発酵と瓶内(樽内)の二次発酵に使用しています。今後も伝統的なセゾンを造っていくつもりですし、さらに瓶内二次発酵させた木樽熟成やサワーエールも造っていくつもりです。
故きを温ねて新しきを知る、これからの新しい京都醸造も楽しみにしていて