Yakima Chiefとのコラボ

これまでのブログで何度かお話したように、京都醸造はコラボをとても大切にしています。2015年にビールを造り始めて以来、世界中の同業の仲間たちから学び合い、知識を共有し合う機会に恵まれてきました。コラボで造ったビールは仲間シリーズという位置づけで、年間の仕込みのなかでもひと際盛り上がりを見せます。

新型コロナウイルスにより、このシリーズを通して他の醸造所とつながることが一筋縄ではいかなくなったことは明らかです。長びく緊急事態宣言の影響で、国内ですらお互いの醸造所を行き来することができず、共同で仕込むだけでなく、情報を共有したり、互いの状況を確認し合ったりすることすら難しくなっています。このように理想とはほど遠い状況にもかかわらず、Yakima Chief Hopsとの特別なコラボをお知らせできうれしく思います。

アメリカの太平洋岸北西部に位置するYakima Chiefは世界で最も有名で尊敬されるホップの生産者かつサプライヤーです。彼らの功績は、Simcoe、Warrior、Palisadeなどの新品種を開発したことでよく知られていますが、最初に品種改良をほどこしたのはAhtanumと呼ばれるホップでした。この品種はかつて、生育エリアの畑一帯に広まったウイルスによって絶滅寸前に追い込まれました。この品種に未来はなく、希望はすべて失われたかのように見えました。そのとき、Yakima Chiefの従業員の一人が声を上げ、生育エリアのすぐ外側にある自分の庭にAhtanumを植えてあると言ったのです。調べたところ、そのうちの2株は病気にかかっていないことがわかりました――すべてのホップのなかで、たった2株です。現在生産されているAhtanumはすべてこの重要な植物の系譜を継いでおり、これがなければYakima Chiefはこの歴史的な多様性を永遠に失っていたでしょう。

 

生産はついに病気が蔓延する前の状態に戻りました。今回のコラボでAhtanumに焦点を当てられることを誇らしく思います。フレーバーとアロマの主役はAhtanumとそのグレープフルーツのような柑橘の特徴です。Simcoeのベリーのような柑橘感がそれを支え、ホップは通常のペレットとCryoホップを使いました。

私たちはAhtanumの系統が受け継ぐ独自の物語にちなんで、2000年代半ばから後半にかけてクラフトビールの人気を高めた、ウエストコーストIPAを復活させることにしました。大量のホップは豊かなアロマとフレーバーをともなう、しっかりとした苦味をもたらしています。このビールでは昔のウエストコーストIPAによくある強い苦味よりも、フルーティーなアロマに主軸を置きたかったのでレイトホッピングという手法を用いましたが、その外観と味わいはクラフトビールブーム初期のころを彷彿とさせるはずです。ぜひ楽しんでくださいね!