仲間と造る W/ Be Easy Brewing
私たちの古くからの親友、ギャレス(Gareth)率いるBe Easy Brewing とのコラボレーションで、青森県産ヒバのウッドチップと一緒に熟成させたアンバーラガー「ひばのきっぱづ」を造りました。
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青森県弘前市で2016 年に創業したBe Easy Brewingは、津軽弁の名前を冠した数々のユニークなビールを造る醸造所。オーナーのギャレスは素晴らしい人物ですが、私たちが彼を特に愛してやまない理由の一つに、共通した青森への愛を持っていることがあります。ご存じの方もいるかと思いますが、京都醸造の創業者にとって青森は、大学卒業後に初めて社会人として働き始めた思い出深い場所であり、たくさんの仲間たちと本当に楽しい時間を過ごした特別な場所。
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青森を心から愛する私たちとギャレスとは、青森愛を介し、昔から知り合いだったかのように瞬間的に意気投合し、それ以来度々お互いを訪れ合うような仲。そんなギャレスと2018年に行った最初のコラボでは、私たちがサワーベルジャンウィットを、Be Easyが抹茶ミルクシェイクIPA を造りました。
そして今回、新たなコラボレーションを考える中で、植物の新芽(spruce tips)を使うアイデアが挙がりました。実はギャレスも以前からこれを使ったビールを造ってみたかったそうですが、コラボのタイミング的に今回は実現が難しく、一旦保留することになりました。ただ、その流れから「木」をテーマにしたビールを両ブルワリーで造ることになりました。
京都で木と言えば、街の北西部にある京北周辺で育つ上質な北山杉が有名で、京町家の建材としてだけでなく、古くから杉箸や日本酒の杉樽、杉の香りを食材に移す調理法など食文化にも深く根付いていることから「杉」を選び、コラボビールの材料として青森へ送ることに。それも京町家改修プロジェクトから出た何十年、もしかすると100年近く前の古い杉の古材を選びました。(京町家改修プロジェクトについて詳しくはこちら)
一方、青森で代表的な木といえば「ヒバ(青森ヒバ)」があり、ほかの木に比べ驚くほど腐りにくい特性があることから、弘前城をはじめ、数々の歴史的建造物に使用されています。またヒノキチオールという香り物質を豊富に含み、よい香りを漂わせる建材として昔から重用されてきました。今回は、このヒバをこちらを京都へ送ってもらうことになり、ビール造りに使いました。
ヒバの香りをいろいろと試してみたところ、軽く熱を加えると柔らかなバニラのような香りが生まれることが分かったので、少し炙ったヒバのバニラ感と、そのままのヒバのハーバルなスパイス感を組み合わせて、ビールに取り込むことになりました。
そして、それらの個性をフルに活かせるスタイルとしてアンバーラガーを選択し、ローストモルトの色合いとバニラの風味が相性よく馴染み、さらにノーブルホップである Tettnangがヒバの特徴をぐんと引き立てる設計。ボヘミアンラガー酵母を使い発酵、仕上げまでの約10日間、ヒバのチップと一緒にビールの熟成を行い、木の特性をじっくりとビールに溶け込ませました。
ヒバのスパイス感と柔らかさで、驚くほど親しみやすく飲みやすい味わいに仕上がりました。森林浴とまではいきませんが、青森のヒバがほのかに香るアンバーラガー、最高ですよ!楽しみしておいてくださいね。
また、名前にもなった「きっぱづ」は、津軽弁で「木の切れ端」を意味する言葉で、このビールのために、様々な種類の"きっぱづ"がサンプルとして青森から送られてきて、その中でも特に香りが良かったのがヒバの"きっぱづ"でした。
今回は新芽のビールはお預けとなりましたが、また将来、ギャレスと再会し、一緒に挑戦できる日が来ることを願っています!
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