Burnt Millとのコラボ - パート1

これまで何度となくお話ししていることですが、私たちがクラフトビールの業界でまず最初に魅了されたことのひとつに、ビールが人と人を繋いでいくということが挙げられます。これはきっと他の業界以上に、もしかするとお酒関係の業界の中でも特に「ビール」を取り巻く世界では顕著な気がします。グラスに入った黄金色の一杯あれば、知らない人同士であっても垣根が下がり、気づけば肩を組むほどに打ち解けて、杯を重ねる光景がよく見られます。会話の中でもビールの話ひとつ飛び出せば一気に距離が縮まって、和やかに雰囲気に。これぞビールが持つ力といえるでしょう。

また、クラフトビール業界においては作り手の間でも同じように、ビールという強い絆をもって互いに関係を持ち、意見を交換したり、一緒にビール造りを行うなど、競合相手ではなく友人や兄弟のようにつながりを大事にする文化があります。互いに知り合うきっかけはイベントなどで顔を合わせることもありますが、そのほかにも醸造家やそのメンバーたちが互いの醸造所を訪れあうということから関係が始まることもよくあります。

3年以上も前の話になりますが、京都醸造の創業者のひとり、ベンが父親の出身地であるイギリスのSuffolkを訪れた際に、街にあるいくつかの醸造所も訪問しました。その一つにBurnt Mill Breweryがあります。2年前京都醸造をJapan's Best New Breweryとして評価してくれた世界のビールレーティングサイト、ratebeer.comでイギリスのBest New Breweryとして紹介されていたその醸造所をかねてから訪れてみたいとベンは思っていました。そこで、昨今はなかば定型文のようになっていますが、「私は京都の京都醸造のベンです。あなたの醸造所の近くにきているんだけど、ちょっとお邪魔してもいいでしょうか?」という風に連絡をしてみたところ、Burnt Mill Breweryの創業者であるCharles O'Reillyさん(以下”チャールズ”)から「メッセージありがとう!もちろん、ぜひ立ち寄ってください」と返事がきました。

Burnt Mill Breweryはいわゆるリアルエールといわれる古典的なビールスタイルを大事にするビアパブが多いイギリスの地方にありながら、アメリカ西海岸のIPAに心酔するチャールズの意向をしっかり反映し、醸造責任者ソフィーの技術をもって、驚くほど高い品質のアメリカンスタイルのペールエールやIPAなど数多くのビールラインナップを発表しています。また缶に施されたラベルのデザインも目を見張るほどのものが多く、彼らのビールそのものと同じだけのこだわりと質の高さを感じさせるものです。

また話していく中でわかったことなのですが、チャールズがかつてファッション業界に勤めていたころから遠く離れた日本に興味を持っていたようで、しばらくメッセージの交換を経た後に、実際に日本で彼と再開することができ、その時に「ビールをぜひ一緒に作りましょう」という話になったのを覚えています。

はじめてBurnt Mill Breweryを訪れてから2年と半年ほどたった頃、東京で催されたMikkeller主催のイベントに私たちもBurnt Mill Breweryと同じく招待されました。チャールズはちょうど第一子が生まれた直後というのもあって参加はできませんでしたが、営業担当のショーンさんが参加していて、いろいろと話をする機会がありました。彼らは日本市場に商品を投入する機会を考えているということを知り、これはいい出会いになるんじゃないかと直感的に思い、数時間後には東京でクラフトビールの輸入業を営むAQ Bevolutionのアルバートさんを紹介していました。

それ以降、AQ Bevolutionを通して、国内でBurnt Mill Breweryのビールの品質と味の良さがとどろき、最近ではここ京都の街でもよく見かけるようになりました。

そして今回のコラボレーションの話に戻りますが、予期せぬコロナの影響は計り知れないものではあるけれど、このコラボレーションを実現するために、このまま現地に出向くタイミングを待つのではなく新たな手法で行うことを決め、2021年の夏よりさらに話合いを始めました。この状況を鑑み、Zoomを経由し、意見交換やレシピの内容を検討する中で、お互いにとって新しい試みを盛り込んだものを作ることにしました。こちらで作ったコラボレーションビールそのものの中身について既に今週リリースしました。そして、同時に遠く離れたSuffolkで作られたもう一つのビール(下の写真)も、今冬12月ごろにAQ Bevolutionから発売されるそうですので、気になる方は引き続き注目を。