切捨御免 (Licence to Kill)

今回リリースとなるビールは今までやったことのないユニークかつ言わば未開の領域に足を踏み入れるような面白い挑戦となりました。今回のキーワードはずばり”口当たり”、濃厚かつ滑らかな口当たりを存分に楽しめるビールです。このテーマを実現する方法は多数ありますが、今回レシピ設計の中で取り入れた2つの新手法はダブルマッシングと乳糖です。

今回のビールではもろみ作りを2度別々に行ってそれぞれの一番搾りだけを抽出して足し合わせるという、二番搾りのお湯で”薄まった”糖類(さらには、タンニンなどの望ましいとは言えない物質)が麦汁に含まれないようななんとも贅沢に麦芽を使用した手間のかかる方法に挑戦しました。(この方法はちょっとイメージが湧きにくいかもしれませんので、皆さんが毎朝飲むコーヒーを使う水の量はいつもと同じで豆を途中で入れ替えて淹れる、それによって芳醇でフルボディかつ濃厚なコーヒーの出来上がり、そんな贅沢なコーヒーの淹れ方といえば少し想像つきやすいでしょうか!)乳糖はビール酵母が発酵できない糖類であるため、ビールの仕込み工程で入れた乳糖はグラスに注がれるそのビールまで残ることになります。そのため、甘いと感じさせることなく、濃厚な口当たりを生む絶妙な量の乳糖をいかに入れるかといった点が重要になります。

ビール作りにおいて何か新しいテーマにいざ挑戦するという時、そこにはいつも不安が頭をよぎります。ですが”口当たり”というキーワードの今回の新たな冒険もまた胸躍る結果となりました。新たな冒険から生まれた今回のビールをぜひお楽しみください、乾杯!

名前の由来:
ありとあらゆる選択肢があるこの人生、
何を選ぶのかは大事だが
何を選ばないのかも大事である。

ビール造りにおいてもたくさんの取捨選択があり、
選ばれたものだけが味を形成しているが
選ばれなかったものが必ずしも不要だった訳ではない。

選ばれなかったものたちを想い、
より良いビールを完成させることが醸造家の義務である。

私たちの「切捨御免」は特権ではない。

スタイル: インペリアル・スタウト

モルト:
Maris Otter, Oat, Munich, Crystal T50, Medium Crystal, DRC, Carafa 2, Carafa Special Type 3, Roast Barley

ホップ:
ビタリング - Merkur
味・アロマ - Chinook, Centennial

その他:
乳糖

酵母: American Ale

ABV: 8.0%

IBU: 54

ガスボリューム (炭酸ガス含有量): 2.2