新しいステージで活躍する麦芽カス
規模や場所を問わず、世界中の醸造所が一度は悩んだであろう醸造工程で発生する廃棄物の処理方法。醸造工程で発生する廃棄物の多くは液状で、発酵・熟成・洗浄の各工程で少量ずつ処理されますが、仕込みの段階で生まれる「麦芽カス」は、役目を終えた後も形を残します。そして麦芽カスの処理について、たくさんのブリュワー達が頭を抱えています。
麦芽や小麦に含まれるでんぷんが糖に変わったら、それをろ過して「麦汁」が完成します。その際の残留物が「麦芽カス」で、これは醸造所ではほとんど役に立ちません。 しかも、それぞれの過程で水分を吸収するため重くなり、保管場所も必要になります。 そのことから、大量にかつ定期的に発生する麦芽のカスは、有効な再利用されず、ほとんどの場合他のゴミと一緒に処理されてしまうようです。
私たちは創業以来、ビール造りをするなかで環境により優しい選択をすることを心がけてきました。その中で最も長く続けているプロジェクトのひとつが、地元の農家と協力して行う「麦芽カスの再活用」です。このプロジェクトの救世主となってくれた西本昭雄さんは、私たちの長年の友人です。
私たちが醸造を始めたばかりの頃は、麦芽の使用量が少なかったので、西本さんと同僚の今津さんの二人で回収をほぼまかなっていました。 生産量が増えるにつれ、西本さんは無尽蔵ともいえる人脈を駆使して、少しずつ回収者の輪を広げ、今では10件ほどの農家さんを取りまとめ、麦芽カスを第二のステージへと導いてくれています。また、農家だけでなく、京都市動物園とも連携しています。
では、現在このプロジェクトに関わっている方々が麦芽カスをどのように活用しているかをご紹介します。現在、プロジェクトに関わっている方々の多くは主に畑で肥料や手入れ用として使っています。麦芽カス中に含まれる糖分や栄養分は土壌菌の餌や栄養源となり地力を生む堆肥になります。また、雑草の繁殖や土壌の乾燥を防ぐために、植物の根元に撒き、水分や栄養分を補給するために使うという方法もあります。その他、動物たちの飼料としても活用されています。京都市動物園の飼育員のブログやYouTubeで、その様子が紹介されています。
京都市動物園 飼育員ブログ:
https://www5.city.kyoto.jp/zoo/enjoy/blog/breeder-blog/20210425-44931.html
象:https://www.youtube.com/watch?v=uesA_2CObAk
ゴリラ:https://www.youtube.com/watch?v=Xi2wVKZCR2w
エミュー:https://www.youtube.com/watch?v=CS-7iONIgbs
ヤギと羊:https://www.youtube.com/watch?v=R89e6uq9_nc
私たちは、これまで紹介した方法以外にも、麦芽カスの活用にはたくさんの可能性があると信じています。このユニークでやりがいのあるプロジェクトをさらに発展させるため、京都醸造は再活用のリーダー西本さんとともに、より多くの人たちに参加してもらえるような取り組みにしたいと考えています。 新規参加者の募集については、また次回にお知らせします。