打ち水 (Uchimizu)

今回の仕込みでは、ホップの品種と抽出温度について遊び心を加えてみました。いつも気まぐれシリーズで新しいホップを試しているのですが、今回新しく届いたHBC692はあまりにも魅力的ですぐに試さずにはいられませんでした。HBCとついているホップは開発の最終段階にある、実験的に栽培されている品種です。毎年何千もの品種のホップたちが長い試験の道のりを歩み、正式に栽培されるまで厳しい検査をくぐってきます。検査を通過できてようやく名前が与えられ(例えばMosaicHBC369という番号が付けられていました)、そして本格的に栽培され始めます。HBC692はグレープフルーツ、フローラル、ストーンフルーツの様なアロマと、独特な松っぽさとクリーミーな特徴もあります。今回の仕込みではHBC692の遠い親戚であるSabroと組み合わせて甘い果実感をさらに強調することにしました。

この2種のホップをワールプールの工程で投入しましたが、その際に新しいテクニックを導入しました。ワールプールとは、煮沸終了後の液体から不要な沈殿物を分離させるために釜の中で渦をつくる工程です。通常は煮沸終了直後の温度(約100℃)で行うのですが、「後ろめたい秘密」の仕込みに倣って、ホップを投入する前に温度を下げることにしました。それにより高温で揮発されてしまう繊細な香りと味わいをビール中に残すことができ、嫌な苦味を出さずによりホッピーなビールに仕上げることができました。夏の終わりの涼をとるのに、しっぽりやるのもいいのではないでしょうか。それでは乾杯!

名前の由来:誰もが見たことがあろうだろう「打ち水」。猛暑日に暑さに耐えられず、水を撒くことによって少しでも涼しげを感じる。今回のビールはまさにその効果があり、喉への打ち水だと思って飲んでいただきたい。

スタイル:
セッションIPA
モルト:
Pilsner, Vienna, Flaked Wheat
その他:
米フレーク
ホップ:
ビタリング - Merkur
味・アロマ - Sabro, HBC 692
酵母:
American Ale
ABV:
4.5%
IBU:
22
ガスボリューム (炭酸ガス含有量):
2.4